東京高等裁判所 平成11年(う)1253号 判決
被告人 有限会社浦和ビーケイアップ(旧商号 有限会社東日本調質林業)
〔抄 録〕
論旨は、要するに、原判決は被告会社(有限会社浦和ビーケイアップ)に対して罰金刑を科しているが、本件について同社は免責されて無罪又は免訴が言い渡されるべきであるから、原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の解釈、適用を誤った違法がある、というのである。
そこで検討すると、関係証拠によれば、以下の事実が認められる。
1 皆川匡雄は、平成三年五月二三日設立の有限会社浦和ビーケイアップの代表取締役安澤修から、同社が埼玉県の産業廃棄物処理業の許可を得ているものの休眠状態であると聞いて、自己らの企てていた調質炉事業に同社を利用しようと考え、同事業の資金提供者である廣橋英治と相談の上、同人が同社を買い取ることにした。
2 皆川及び廣橋は、安澤と交渉し、平成九年三月四日に有限会社浦和ビーケイアップの商号を有限会社東日本調質林業に変更し(同月七日登記)、同社の実質的買収者である廣橋が代表取締役を務める株式会社プレイバーコーポレーションと有限会社浦和ビーケイアップとの間で廃棄物の中間処理事業の譲渡に関する同年四月一四日付けの基本契約書が作成され、その上で、同月一六日に皆川が有限会社東日本調質林業の代表取締役に就任した(同月二三日登記)。
3 安澤は有限会社東日本調質林業の取締役にはなっていたが、同社の企てた調質炉事業には全く関わらず、専ら皆川が同社の代表者として同社の業務全般を統括し、原判示のとおり、同社の業務に関して、廃プラスチック類等の不法投棄をするとともに、無許可で廃棄物の処分を業として行い、また、不法投棄にかかる廃プラスチック類等を撤去するよう措置命令を受けたのに、これを期限までに撤去せず、同命令に違反する犯行に及んだ。
4 安澤は、廣橋により前記2の契約書のとおりに事業譲渡代金の支払いの履行がされなかったことなどを理由に、廣橋らの同意を得て、本件犯行後の同一〇年一月三〇日に本件有限会社の商号を有限会社東日本調質林業から有限会社浦和ビーケイアップに戻し、皆川が代表取締役を辞任して、安澤が代表取締役に就任した(同日登記)。
右によれば、被告会社である有限会社浦和ビーケイアップとその旧商号である有限会社東日本調質林業との間において、法人として同一性があることは明白である。同一性に疑問があるかのようにいう所論は失当である。
所論は、両罰規定で法人を処罰する趣旨は、法人に行為者である従業者や代表者等についての選任監督上の義務違反があるからと解すべきところ、本件では、会社の事業譲渡により、従前の経営者(安澤)に選任監督権がない当時の法人の責任を問うもので、違法であると主張する。しかしながら、本件当時、皆川は有限会社東日本調質林業の代表者で、その業務に関して、行為者として前記の犯行に及んでいるのであるから、同人の行為はそのまま同社の行為とみるべきであり、同社が法人として刑事責任を負うものであることは明らかであるところ、これと同一性を有する商号変更後の被告会社(有限会社浦和ビーケイアップ)が、その刑事責任を負う立場を引き継いでいることも自明である(仮に本件のように行為者が代表者である場合にも、法人に責任を問うためには代表者についての選任監督上の義務違反があることを要するという考えに立っても、前記のような事実関係のもとでは、本件で有限会社東日本調質林業において代表者につき選任監督上の義務を果たせないような特段の事情があったとはいえない。なお、所論は、安澤には前記事業譲渡後の有限会社東日本調質林業に対する支配権がない状況であったというが、右選任監督上の義務は、本件犯行当時の法人について検討すべきであり、安澤個人に義務違反があったかどうかが問題となるわけではない。)。所論は採用できない。
(米澤敏雄 岩瀬徹 沼里豊滋)